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9/13中日ヤクルト戦での誤審騒動について考える

2021/9/13に行われた中日ヤクルト戦において事件は発生した。
偶然その日行われたプロ野球の試合はこの1試合だけだったということもあり、この事件は大きな騒動を巻き起こした。

※ちなみに筆者は中日ファンであるが、最後の節を除いてできる限り中立な立場から意見を述べるよう努めたつもりである。

9回表に起こったこと

プロ野球ファンであればおそらく説明せずとも知っているであろうため簡単に。
9回の表、一死一二塁の場面でバッター川端の放った打球はセカンドゴロ。これをファーストに送球するもセーフ。そこからセカンドに送球し、ランダウンプレーとなる。その途中で三塁まで進んだ二塁ランナーが本塁に突入したが、ランダウンプレー中のセカンドが気付いてホームに送球、タッチアウト。
その後中日サイドのリクエストで、セカンドフォースアウトが確認され、スリーアウトが成立し試合終了。
本来であればバッターランナーがセーフとなった時点で一塁ランナーはフォースプレーとなり、ランダウンプレーにはなり得ずセカンドベースを踏んだ時点でアウトとなるのであった。
ヤクルト側の言い分としては、もしセカンドフォースアウトが正しく宣告されていれば本塁突入はしなかったはずである、というものであるが、抗議をするものの判定が覆ることはなくそのまま試合終了となった。

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余談だが、奇しくも2年前、同じバンテリンドームの二塁にて、誤審騒動があった。
前回のプレーは二塁塁審が見ていなかったのにジャッジをした、
今回のプレーは二塁塁審が見ていたのにジャッジをしなかった、
真逆の事象である。

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なぜランダウンプレーになったのか

外から見ている第三者からすれば本来起こるはずのないランダウンプレーが発生したことは極めて不可解であるが、実際にフィールドでプレーしていた選手や審判、コーチャーからすれば短い瞬間に全てを把握することは不可能であり、それが本件の原因である。
まず浮かぶ可能性として、ルールを正確に把握していなかったというものが考えられるが、さすがにこれはないと思われる。バッターランナーがセーフとなった時点で一塁ランナーはフォースプレー、これは少年野球でも分かるレベルのルールであり、いくら一瞬の判断とはいえプロ野球に携る者たちがこのルールを間違えるとは考えにくい。
翌日審判サイドから出された見解としては、二塁塁審がバッターランナーセーフの判定を見落としていた、というものであった。これは後から取り繕ったものではなく、おそらく事実なのではないかと思っている。映像を見ると、一塁セーフのジェスチャーをする頃には既にボールがセカンドに向けて送球されており、二塁塁審はそれを追うため一塁付近からは目を切っているように見えた。ちなみに一塁セーフのジャッジもワンテンポ遅れたように見えたので、それも見落としの原因の一つだったと思われる。
一塁ランナーも同様に、一塁から二塁に向けて切り返していたところだったので、一塁セーフの判定は見えていなかったであろう。ショートは一塁方向を向いていたのでジャッジが見えていてもおかしくはないが、ファーストから送球されたボールから目を切るわけにはいかないだろうから、やはりジャッジは見えていなかったのではなかろうか。一方ファーストとセカンドは間近にいたこともあり、ジャッジは見えていたと思われる。
そして、仮にバッターランナーがアウトであった場合、一塁ランナーはフォースプレーではなくタッチプレーとなる。バッターランナーのアウトセーフにかかわらず一塁ランナーにタッチすればアウトになることは変わりないため、バッターランナーがアウトであった場合のことも考えて一塁ランナーとショートはランダウンプレーを開始したと考えられる。
つまり、審判のジェスチャーと送球のタイミングが被ったために、二塁塁審と一塁ランナーとショートがアウトセーフの判定を見落とし、結果どちらの判定でも構わないランダウンプレーが起こってしまったということである。

なぜ二塁ランナーは本塁に向かったのか

ここまでは一二塁間の話であるが、次に本塁突入がなぜ起こったのかを考える。第三者視点ではバッターランナーセーフ、順当にいけば一塁ランナーがアウトとなり、二死一三塁で最後のチャンスに懸ける、という展開が見えたはずである。
もしランナーが第三者目線でプレーを見られていたなら、おそらく本塁突入はしなかったはずだ。次以降のバッターがよほど期待できないのであれば相手のミスに期待して突っ込むことも考えられるが、次のバッターが調子がそこそこの2割8分のバッターであり暴投でも同点となることから、自重しておくのが賢明な場面である。
このため、何かしらの事実誤認があったと考えるのが自然である。ちなみに二塁ランナーは一二塁間のプレーを断片的にしか見えていないはずなので、実際には三塁コーチャーの認識、判断である。
まず考えられるのは、バッターランナーのセーフを見落としており、アウトかもしれないと思っていたというもの。これは一塁ランナーやショートと同じであり、攻撃側の最悪ケースとしては二死まで確定した上でのランダウンプレーが起こっているということになる。ここで一塁ランナーがアウトになった瞬間に負けが確定するため、三塁コーチャーとしては一か八かで本塁突入するしかない。一塁ランナーがアウトになるより先に本塁セーフが認められれば1点入って同点となる。
次に考えられるのは、バッターランナーのセーフは見えたものの、目の前でランダウンプレーが起こっていることから、その判定に懐疑的になってしまった、というものである。ランダウンプレーが起こっているということはバッターランナーはアウトとなっているということであり、「あれ?さっきセーフって見えたけど見間違いだったのか?」という深読みに陥ってしまうのは考えられなくはない。こうなるとバッターランナーのセーフを見落とした場合と同様の思考となる。
以上を踏まえて、考えられる可能性は以下の3つである。

  • 全てを把握した上で、次以降のバッターに懸けるよりも本塁突入の方が可能性が高いと判断した
  • バッターランナーのセーフを見落としていた
  • バッターランナーのセーフは見えていたが、目の前で起こっているランダウンプレーに引きずられて、そのジャッジに対して深読みしてしまった
  • (敢えて四点目を挙げるなら、なんかよくわからんがとりあえずワンチャン突っ込め、というもの)

一点目についてはなんとも言えないが、さすがに味方に対して薄情すぎるので、そんなことはないのではないかと思う。
二点目だった場合は完全に三塁コーチャーのミス。
三点目が現実的な可能性で理性的な判断ではあるが、実際に目視した一塁塁審のジャッジよりも目の前で起こっているランダウンプレーの方を信用したという意味では深読みだったと言わざるを得ない。
(とりあえずで挙げた四点目、意外と可能性があるのかもしれない。状況を把握できず混乱したのであれば理解できる判断ではあるが、とはいえこれも三塁コーチャーのミスである。)

つまり、どのような可能性を考慮しても、三塁コーチャーについても多少以上のミスがあったと思っている。

ちなみに、ランダウンプレーが絶賛行われている最中に、「行け行け!」「走れ!」というような声がどこからともなく聞こえている。これは三塁コーチャーかヤクルト側のベンチが発しているものと考えるのが自然である。中日側のベンチが走塁ミスを誘発するために発しているなんてことはさすがにないだろう。つまりベンチの認識、判断も三塁コーチャーに近いものがあったと考えられる。

どうすればこの事件を防げたのか

二塁塁審がセカンドフォースアウトを宣告していれば事は起こらなかった。それはもちろんその通りである。
だが、いろいろ考えていると、世間が言うほどはそれは簡単なことではなかったのではないかと思う。既に述べたように、ボールの動きから目を切らないようにしながら一塁塁審のジェスチャーを見ることは現実的ではない。もし一塁塁審をしっかり見ていた場合、二塁でのフォースプレーが際どいものになった場合そちらを見落としてそれこそ誤審の元である。
ただし、二塁でのフォースプレーを誤審した場合、それはリクエストによって取り返すことができる。今回起きた件の不幸だった点は、「二塁塁審が一塁塁審のジャッジを見落とした、それによってセカンドフォースアウトが宣告されなかった」ということ自体はリクエストによって取り返せても、そこから派生したプレーについてはリクエストでは取り返せず、巻き戻し切れないということである。
これはもはや、野球という競技のルールの限界であると思う。一連のプレーの途中に誤ったジャッジや判断が挟まってしまった場合、それでも選手や審判たちはそれに基づいて、それを信じてプレーを続行しなければならない。そしてリプレイ検証によってその誤りが発覚したとしても、それを巻き戻すには限界があるということである。
もしルールを見直すのであれば、審判が確信をもってジャッジできない場面が生じた際にはとりあえずでジャッジしてそれに基づいたプレーを続行するのではなく、その時点で審判がタイムをかけて審判団でリプレイ検証、協議をすることになるだろうか。

中日ファンとして贔屓目に見たときの思い

試合に勝てたことはまあ喜ばしいことであるが、さすがにヤクルトには申し訳なかった。
中日側は半分消化試合のような状況だが、ヤクルトは1敗の重みが大きい順位であり、二塁塁審がしっかりジャッジしていればまだ同点のチャンスがあっただけにやり切れない思いとなったことは想像に難くない。もし最終的に0.5ゲーム差で優勝を逃そうものならこの試合が蒸し返されて大騒ぎとなるだろう。
とはいえ中日ファンから言いたいのは、「思考過程はどうであれリスクリターンのある選択肢を採ったのだということ」と「中日内野陣がミスなくプレーを完遂したのだということ」の二点である。
まず一点目について、実際には本塁突入に失敗してアウトになったわけだが、もしセーフになって得点が認められた場合、今度は中日側が抗議するだろう。そして抗議をしたところで得点は取り消されないだろう。どう抗議するかというと、「セカンドフォースアウトが正しく宣告されていれば本塁突入がそもそも起こらなかったのではないか」というもので、これは実際にヤクルト側がしている主張と同様のものである。つまり、結果がこうなったからというだけで、本塁突入はリスクリターンのある選択肢であり、それを採ったのは三塁コーチャーの判断であるということである。例えるなら誰かの手違いで借金が生じて、それを取り返すために一か八かで馬券を買って、外れた上に手違いが発覚したので馬券を買った金を返せということである。もちろん、ランダウンプレーを完遂する確率と、ミスをして失点する確率を比較すると、プロのレベルでプレーしている選手たちからしたら前者の方が高いと思われる。なのでヤクルト側からすればリターンよりリスクの方が大きい賭けを強いられたのだ、と言われればその通りなのだが、普通に二死一三塁で次以降のバッターがマルティネスを打てる確率を考えてもヤクルト側不利な確率勝負であったと思われるので、そこは本質的に変わらないと思っている。野球という競技は常に攻撃側が確率的に不利な勝負の繰り返しなのである。(そうは言うものの、繰り返しにはなるがヤクルト側が怒り狂うのはよく分かるし、自分がヤクルトファンだったら同じように怒り狂うだろうなとは思う。)ちなみに二死一三塁から再開しろというのであれば、中日サイドはリクエストしなければ二死一二塁から再開できるはずなので、そちらの方がよい。
そして二点目について、あまり触れられていないので言いたいのは、一連の不可解なプレーであってもしっかりやり切った中日内野陣の守備が堅かったということである。プロ野球選手であればランダウンプレーくらい完遂できて当然だという声もあるかもしれないが、守りに不安のあるチームであればどこかでミスが起こっていた可能性も十分考えられただろう。ファーストの福田とセカンドの堂上は状況把握についてもプレー精度についても何ら問題はなかった。堂上は一塁ランナーをセカンド方向に追いながらという不利な体勢でありながら本塁送球まで正確にこなし、さすが守備に定評のある選手だと感じた。
(ちなみに、セカンドゴロを取った堂上は4-6-3のダブルプレーを狙うのではなく、少し一塁ランナーを追ってからファーストに送球したが、これも素晴らしい判断である。タイミング的に4-6-3のダブルプレーは間に合いそうにない。少し一塁ランナーを一塁側に追い込んでから一塁送球すれば、もしバッターランナーがセーフになってもそこからセカンドに送球すればセカンドフォースアウトでのワンアウトは十分間に合いそうだ。なのであわよくばバッターランナーを先にアウトにしてのダブルプレーを狙う方がよい。という一連の判断をあの一瞬でしているということになる。)
ショートの京田については途中まで怪しい動きをしているのだが、先に考察した通り、バッターランナーについてのジャッジが分からない中で、どちらに転んでも問題のないプレーをこなしていたわけなので、これはこれで立派である。しかも常時三塁ランナーを釘付けにしながら、である。ちなみに福田と堂上は京田に「セカンドベースを踏め」と指示しており、二人が正しく状況を把握できていたことが分かる。試合後の中日公式の動画にて、京田は「福田さんのおかげです!」と言っていた。

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なお、もう一人の内野手であった高橋は、ゲームセット後もまだ状況を飲み込めていなさそうなのであった。「彼が一連のプレーに絡んでいなくてよかった」というようなコメントをどこかで見たが、不覚にも笑ってしまった。がんばれ高橋!

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